撮影現場では、いわゆるギョーカイ用語が飛び交います。
何となくイメージが付く言葉から、全くピンとこない言葉まで、たくさんの用語があるのですが、ここでは実際の撮影現場で、エキストラが知っておくべき言葉をピックアップしてご紹介します!
上手(かみて) / 下手(しもて)
カメラ側から見て、右側が上手(かみて)、左型が下手(しもて)。
助監督や演出、カメラマンの方に「もう一歩上手に!」「あと10センチ下手へ!」などと言われたときに、どっち!?とならないよう覚えておきましょう。
基本的に「上手」と言われたらカメラに向かって左に、「下手」と言われたら右に動けばよいのですが、カメラに背を向けている配置の時もありますし、たまに、「”自分から見て”上手に!」という言い方をする方もいるので、混乱しないようにご注意。
逃げる(にげる)
「じゃあ次本番で行きます。逃げてくださーい」という感じで使います。
なんとなく想像ついたかと思いますが、不要なモノや人がカメラに映らないところに避難することを「逃げる」と言います。なお、エキストラは、出番時以外はカメラに映る範囲はもちろんのこと、スタッフの方のじゃまにならない位置まで”逃げて”おくのが基本です。
たまにいますが、スタッフの方と一緒にモニターを観たりするのは止めましょう。それをしていいのは俳優部の方だけです。笑
バレる
カメラに映ってはいけないものが映ってしまっている状態のこと。
俳優さん以外のスタッフだったり、機材や機材のコードだったり、カメラマンの方がチェックして、修正をします。「おいおいお前そこバレてるぞー」「マイク位置ここだと、バレてます?」など、スタッフの皆さんがテキパキ調整していく姿は見てて格好いいです。
間違っても自分がうっかり「バレてる」と言われることのないように。
なお、バレるに繋がって使われる「わらう」は、ものを退かすことを言います。「そこバレてるからわらって!」など。
板付き(いたつき)
最初から最後までその場から動かない、ということ。
例えば、街中の通行人がたくさん行き交うシーンのエキストラなどで、「お二人はここで立ち話をしている友達同士ということでお願いします。板付きで。」などと指示されます。
抜ける
カメラが向いている、バックグラウンドのこと。映っている背景のことを言います。
手前の役者さんをメインに撮影しているけど、背景としてばっちり映ってるよ、と言う意味で「ここ抜けてますんで、お芝居よろしくお願いしますね」などと言われます。
お休み
一旦出番が無し、という意味。
エキストラは、当然必要な場面とそうじゃない場面があります。集められたエキストラの中でから、1人だけ必要なシーンもあれば、全員が必要なシーンも。同じシーンでもカメラ位置によっては、不要になることもあります。
「このカットはお休みで」と言われたら、邪魔にならないよう速やかに逃げましょう。
パントマイム / 口パク / サイレント
メインの役者さんが台詞を言っているのをしっかり録音するため、周りのエキストラは、音を立てないようにお芝居をすることがあります。しゃべっているように見えるお芝居も声なし、乾杯をしているように見えるグラスも音を立てないように”フリ”でやっていたりするんです。
「本番ではパントマイムでお願いします」「ここは声ありで大丈夫です」など、都度指示されますので、聞き洩らさないように注意しましょう。
オンリー / ガヤ録り
音声”だけ”を録ること。
パントマイムで撮影した後や、追加素材として雑音が必要な場合などに、撮影とは別に音声だけを録ります。
たいてい一通りの撮影が終わったあとに、「すみませんオンリー録ります」と招集され、マイクのそばで、声だけのお芝居をします。それは一人だったり、数人だったり、大人数だったり。
例えば、居酒屋の酔っ払った会社員や、火災現場で騒いでいる野次馬、ボクシングの試合会場の歓声、などなど、自分ひとりだけのオンリーは、慣れないとちょっぴり恥ずかしいです。
シャッター
画面を横切る動きのこと。
メインで撮影されている役者さんの前を、通行人が横切ったり、車やバイクが通り抜けたりするシーン、よくありますよね。あれをシャッターと言います。”人混み”を表現する時によく使われる演出で、エキストラがその役割をすることが多いです。
引き / 寄り
「引き」は広い視野のカットのこと。シチュエーションの全景を伝えるシーンは引きで撮影することが多く、エキストラが大事なシーンになることが多いので張り切って頑張りましょう。「ルーズ」や「ロング」と言うこともあります。
逆に「寄り」は被写体に近づいて撮影することをいいます。俳優さんの表情や、キーアイテムなどの映像を近い距離で撮影することで「アップ」「タイト」と言うこともあります。
返す
いま撮影したカットを、カメラを移動して別アングルでまた撮ること。「カット! はいOKです。 では次、返しマース」という風に使われます。「返しまーす」と聞こえたら、カメラ準備ができ次第また同じお芝居をするものと思ってください。
映画やドラマの1シーンは、こうしていくつものアングルから撮影したものを編集してようやく1つのシーンになっているものがほとんどです。俳優さんはカメラ位置を変えて何度も同じシーンを撮影するので、ほんと大変です。
ぬすむ / 嘘をつく
撮影上、都合が良いように小道具や俳優さん、エキストラの配置を変えることを「嘘をつく」と言います。
同じシーンをアングルを変えて複数カット撮影する場合などに、カメラポジションが変わったことで俳優さんの顔が小道具に隠れてしまったりします。そんな時に、見る人に違和感を与えない程度に、配置をズラすなどの「嘘」をつきます。
「あー、ここカブっちゃうな。少し嘘つきますか」など。
バラシ
「終わり」「解散」の意味。
撮影が終わった時に「お疲れ様でした。以上でバラシになります」などと使われます。
また、エキストラ事務所に所属していると、書類選考等で落ちた時に「選考の結果バラシになりました」という感じで、キャンセルの意味としても使われたりします。
メシずみ / バラメシ
「メシずみ」は食事を済ませて・・の意味。「バラメシ」はいったん解散して食事をする、という意味です。
エキストラ参加時に「メシずみで集合」と言われたら、ロケ弁は出ません、といういう意味ですね。ざんねん。
バラメシは、食事休憩になったらそれぞれ自由にどっかで食べて来てね、という意味でこれもロケ弁はでないという意味です。当然どちらも自腹。
タク送(たくそう)
撮影が深夜にまで及んだ際に、タクシーで帰宅するパターンのことを「タク送」といいます。
終了時間が深夜になったり、集合時間が早朝で、まだ電車が動いていない時間だったりすることは珍しくありません。
そんな時に”終了時間によってはタク送になる”という条件の案件もありますので、言葉として知っておきましょう。
香盤 / 香盤表
当日の演者や撮影シーンなどの、撮影スケジュールが書かれた表。撮影予定の時間割がシーンごとに書かれているので、これを見ればどんなシーンを撮影するのか、終了見込み時間がいつか、などの予定が分かります。
エキストラは「EX」として書かれていて、自分の出演シーンのことも分かるのですが、個別にはもらえないことも多いので、撮影現場に張り出してあったら、休憩時間に確認してみましょう。
俳優部 / アクション部
「俳優部」は、役者さんたちのこと。メインの俳優さんはもちろんのこと、サブキャスト的な方も俳優としてキャスティングされている人は俳優部と呼ばれます。なお、エキストラは俳優部とは呼ばれません。
「アクション部」は大事な”動き”を求められるキャストで、台詞はほぼないののの、格闘シーンや、時代劇の殺陣などもアクション部の方々が活躍します。(エキストラにはできないプロの立ち回りです)
撮影現場では、エキストラを含め、諸々事前確認が行われたあと、「では俳優部呼んできますね」となって撮影がスタートします。
なお、監督や助監督の事は「演出部」と呼ばれていますし、ほかにも美術部、照明部、制作部など、各担当パートのことを「●●部」と呼ぶのは文化みたいですね。
・現場で聞こえてくる専門用語は無限にあるけど、エキストラとして知っておいたほうがいい言葉はそんなにない。
・スタッフさんも分かっているので、エキストラには分かりやすくお話しをしてくれます。
・とはいえ、わかってるとすぐ動けるので知っておくに越したことはない。
・とはいえ、あまり知った風に振舞ってるのも、なんかしゃらくさいエキストラに見えてくるので、ほどほどにね。
・ちなみにカーディガン羽織って「ザギンでシースー」とか言ってるギョーカイ人は一度も見たことないです。
以上、そんな感じで。
今日も現場お疲れ様でした。
トラオ